飲み会や旅行のあと、幹事が「PayPayで送っておいて」と言う。ここまでは普通の光景です。ただ、その手前で幹事が何をしているかというと、たいてい電卓を叩いています。
割り勘アプリと送金アプリ、両方いるのか。それぞれ何をやってくれるのか。この記事はそこを切り分けます。
この記事の要点
- 割り勘アプリは送金までやりません。法律上できないので、実際に動かすのはPayPayか銀行振込になります
- PayPayの「わりかん」機能は2023年5月31日に終了し、今は「グループ支払い」です
- 立て替えが4件を超えたら、金額を出す部分は割り勘アプリに任せたほうが操作が減ります
割り勘アプリは送金までやらない。やれない
「計算したなら、そのまま送金までやってくれればいいのに」と思ったことがあるはずです。ほとんどの割り勘アプリはそれをやりません。手を抜いているわけではなく、やろうとすると法律の話になるからです。
銀行以外の会社が「為替取引」、つまり他人のお金を預かって別の人に渡す仕事を業として行うには、資金決済法にもとづいて内閣総理大臣の登録を受ける必要があります(財務省関東財務局)。
登録は扱う金額で3つに分かれていて、第一種は上限なし、第二種は100万円以下、第三種は5万円以下。さらに10万円を超える送金では本人確認が義務づけられます(日本資金決済業協会)。登録には審査があり、利用者から預かった資金の保全も求められます。
PayPayはこの登録を済ませた資金移動業者です。だから送金ができる。一方、無料で使える割り勘アプリがこの体制を背負うのは現実的ではありません。
結果として、割り勘には道具が二つ要ることになります。誰が誰にいくら払うのかを出すところまでが割り勘アプリ。そこから先の送金がPayPayや銀行振込。この線引きは、アプリの設計思想ではなく制度の側で決まっています。
PayPayでできること
PayPayの画面をいくら探しても「わりかん」が見つからない、という人がいます。操作を間違えているわけではありません。
公式ヘルプにこう書かれています。「2023/5/31をもって『わりかん』機能は終了いたしました。今後は『グループ支払い』をご利用ください」(PayPayヘルプ)。やっかいなことに、「ペイペイ 割り勘 やり方」で検索すると終了した機能の解説が今も上位に残っています。そのとおりに操作しても、その画面はもうありません。
今の手順はこうです。ホーム画面の「送る・受け取る」を開き、右下の「+」から「グループ支払いを作る」を選ぶ。金額を入力して、請求する相手かグループを指定する。
分割方法は2つ用意されています(PayPay公式ガイド)。
- [均等割り] — 総額を人数で割る
- [金額の調整] — 1人ずつ金額を変える
請求を送ると相手に通知が届き、誰が払って誰がまだかは一覧で確認できます。手数料は無料で、1円単位で送れます。支払う側にもPayPayのアカウントが必要な点だけ注意してください。
ここまでで分かるとおり、1人が全額を立て替えて、あとから集めるだけなら、PayPayで完結します。割り勘アプリを持ち出す理由はありません。
複数人が立て替えた場合 ── できる。ただし操作が増える
「宿泊費は自分、食事代は友人、レンタカーはまた別の人」という状況でも使えます。公式が旅行を例に手順を案内しています(グループ支払い 旅行での活用法)。
- Aさんが宿泊代を入力 → BさんCさんに請求が届き、2人が支払う
- Bさんが昼食代を入力 → AさんCさんに請求が届き、2人が支払う
- Cさんがタクシー代を入力 → AさんBさんに請求が届き、2人が支払う
立て替えた人がそれぞれ請求を立てる形です。ここで数えておくと、3人で3件の立て替えなら、支払いの操作は2回×3件で6回。この回数は公式に書かれているものではなく、案内されている手順から数えたものです。
貸し借りを相殺して1回にまとめる、という説明は公式には見当たりませんでした。機能があるともないとも書かれていないので断定はしません。ただ、立て替えの件数に比例して操作が増えることは手順から分かります。
| 立て替えの件数(3人の場合) | 支払いの操作 | 相殺できれば |
|---|---|---|
| 1件 | 2回 | 2回(差なし) |
| 2件 | 4回 | 最大2回 |
| 3件 | 6回 | 最大2回 |
| 4件 | 8回 | 最大2回 |
立て替えが1件ならPayPayだけで足ります。差が開き始めるのは2件目から。目安として、立て替えが4件を超えたら、金額を出す部分は割り勘アプリに分けたほうが操作が減ります。
4件というのは、思っているより早く来ます。学生時代に車を出してスキーへ行くと、ガソリン代は自分、高速代は誰か、買い出しはまた別の人、帰りの食事はさらに別の人。ここまでで4件です。旅行や合宿では、むしろ4件で収まるほうが珍しい。
金額は1人ずつ変えられる。ただし計算は自分でする
大人と子供で金額を変えたい。お酒を飲まなかった人は安くしたい。これはPayPayでもできます。[金額の調整]で1人ずつ入力すればいいだけです。
できないのは、比率から金額を自動で出すことのほう。%やスライダーで「大人1.0、子供0.5」と指定する仕組みはなく、選択肢は[均等割り]か[金額の調整]の2つです。つまり、入力する金額は自分で計算しておく必要があります。
実際にやってみます。私が毎年やっている同級生との新年会が、ちょうどこの手のケースです。6世帯が集まって大人8人・子供8人の計16人。
総額を56,000円、大人8人のうち飲んだ人が5人、飲まなかった人が3人だったとします。比率は飲まない大人を基準の1.0、飲む大人を1.4、小学生を0.5とします。
- 分母:5×1.4 + 3×1.0 + 8×0.5 = 14
- 1単位:56,000 ÷ 14 = 4,000円
- 飲む大人 5,600円 / 飲まない大人 4,000円 / 子供 2,000円
- 検算:5×5,600 + 3×4,000 + 8×2,000 = 56,000円
ここまで出してから、16人分の金額をPayPayに1つずつ入力していきます。PayPayが引き受けてくれるのは、この入力が終わったあとの部分です。
実際の新年会では、これに二次会のカラオケ代とタクシー代、コンビニで買ったお菓子代が乗ります。立て替えた人もバラバラ。盛り上がっている周囲をよそに、幹事だけがスマホの電卓を叩き続けることになります。
PayPayで足りる場面と、足りない場面
| 場面 | 判断 |
|---|---|
| 1人が全額払い、均等に割る | PayPayだけで完結。他は要らない |
| 1人が全額払い、金額は人によって違う | PayPayでよい(金額は自分で決める) |
| 立て替えが4件を超える | 件数の分だけ請求と支払いが発生する |
| 比率で配分したい | 金額を計算してから入力する |
上2つに当てはまるなら、この先を読む必要はありません。PayPayで済ませてください。
金額を出す道具と、送金する道具は別
整理すると、割り勘には二つの工程があります。いくらずつか決める工程と、実際にお金を動かす工程です。
後半はPayPayが完全に引き受けてくれます。1円単位で、手数料なしで、複数人に、それぞれ違う金額で請求できて、誰が払ったかも分かる。ここに不満はありません。そして前半に戻ってくることもありません。資金移動業の登録という壁がある以上、その役割分担は当分変わらないからです。
残っているのは前半だけ。人数が多く、立て替えが散らばり、比率も揃っていない。そういう会の幹事をやるなら、金額を出すところは割り勘アプリに任せて、出てきた数字をPayPayに渡すのが賢明です。多くのアプリは比率や人数で配分を指定できるので、さきほどの計算を手でやる必要はなくなります。
請求を送るのは、結局あなたです。アプリがやってくれるのは、その請求に載せる数字を正しくすることだけ。それでも、帰りの車内や宴会の隅で電卓を叩き続ける最後の30分は返ってきます。
昨日はお疲れさまでした。会費の内訳を計算したので共有します。飲んだ方5,600円、飲まなかった方4,000円、お子さん2,000円です。このあとPayPayのグループ支払いで請求を送りますので、届いたら支払いをお願いします。
