最初に正直に書きます。お盆や年末年始の親戚の食事会に、「きっちり割り勘するのが正解」という話はありません。親が出す。長男が出す。なぁなぁで誰かが払う。それで回っているなら、それでいいのです。
私自身、割り勘アプリを作った人間ですが、自分の実家側の集まりではアプリなど使っていません。親戚が多くなく、家族構成も似ていて、仲が良い。親が払いたがるので、親が出すか私が出すかのどちらかで、独身のきょうだいは出さない。それが自然に通っていて、誰も困っていません。正直、きっちりするのも面倒です。
ではなぜこの記事を書くのか。親戚の食事会のお金には、「なぁなぁで回る家」と「静かにモヤモヤが積もる家」がはっきり分かれるからです。その分かれ目は、家族の仲の良し悪しではありません。「構成の非対称」があるかどうかです。
「なぁなぁ」で回る家と、回らない家の違い
うちの実家側がなぁなぁで回っているのは、偶然ではありません。条件が揃っているからです。親戚の数が少ない。兄弟それぞれの家族構成が似ている。つまり、誰が払っても、ざっくり均等に回り持ちしても、長期的にはだいたい公平になる構造なのです。
ところが、次のような「非対称」がある集まりでは、同じなぁなぁが静かな不公平の発生源に変わります。
- 世帯人数の差:うちは夫婦と幼児1人、兄の家は育ち盛りの中学生が2人。それで「世帯ごとに均等割りね」と言われると、食べる量が倍違うのに同額です。子どもの人数と年齢の差は、親戚の会計で最大のモヤモヤ源です。
- 立場の差:「長男だから多めに」という暗黙の圧。逆に末っ子や独身は出さなくていい空気。本人たちが納得しているうちは文化ですが、家計を預かる配偶者から見ると「なぜうちだけ」になります。
- 親族の数の差:夫側は親族が多くて集まりも大きい、妻側は少ない——といった差があると、帰省のたびに片方の家系にばかりお金と気遣いが流れていきます。
本当の緊張は、親戚同士ではなく「夫婦の間」にある
そして、これが一番書きたかったことです。親戚の食事会のお金のモヤモヤは、親戚同士の喧嘩にはめったになりません。その場では誰も何も言わないからです。不満が噴き出すのは、帰りの車の中。つまり夫婦の間です。
理由は単純で、夫婦は違う家で育っているからです。片方の実家は「親が全部出すのが当たり前」の家。もう片方の実家は「兄弟でもきっちり分ける」家。どちらも本人にとっては生まれてからずっとの「普通」なので、相手の家のやり方が、ルーズに見えたり、ケチくさく見えたりする。「あなたの家って、いつもああなの?」——この一言が出た時点で、食事会のお金の問題は、夫婦の問題に変わっています。
これは どちらかの家が間違っているのではなく、ルールが暗黙のまま二つの文化が混ざっていることが原因です。だから解決も「正しい割り方を導入する」ことではなく、「暗黙を、見えるルールにする」ことになります。
現実解: 全部きっちりではなく、「非対称だけ」ゆるく整える
私のおすすめは、きっちり割り勘への全面移行ではありません。それは親戚の文化に対して野暮ですし、面倒で続きません。整えるのは非対称が生まれている部分だけで十分です。
- 親世代のごちそうは、ありがたく受け取る。親が払いたがるのは文化であり、楽しみでもあります。そこに割り勘を持ち込む必要はありません。
- 整えるのは「兄弟世帯どうしの分担」だけ。親が出さない回や、宿・レジャーなど金額の大きい支払いについて、世帯ごとの構成差を反映した分担にします。
- 1円単位でやらない。世帯ごとの目安が出たら、千円単位に丸めるくらいのゆるさが、親戚の空気には合います。
世帯の構成差は、年齢別のルールで吸収します。手計算でゆるくやるなら、「10歳未満は無料・10歳から高校生までは半額・大学生からは大人と同額」の3段階で十分です。これならメモと電卓で回せます。もっときめ細かく(小学生は0.3、飲まない大人は0.7、など)やりたい場合の考え方は別記事「子どもの割り勘は何歳からいくら払う?」に書きましたが、そこまでの比率計算を手でやるのは現実的ではありません。そのときが、次のアプリの出番です。
ここから先は「非対称のある家」だけの話です
繰り返しますが、なぁなぁで回っている家に、ここから先の話は必要ありません。私自身、実家側の集まりでは何も使っていません。読み進めてほしいのは、世帯の構成差や立場の差があって、帰りの車の中が毎年少し気まずい家だけです。
整えると決めた場合の実務は簡単で、割り勘アプリに「A家」「B家」と世帯単位で登録し、大人と子どもの比率を設定して、総額を入れるだけです。FAMI-KANの場合、参加者の登録もアプリのインストールも不要で、結果のURLを家族LINEに送れば、各世帯が「自分の額と、その計算根拠」を確認できます。
この「計算根拠が見える」ことには、金額の公平以上の効果があります。帰りの車の中の「なんでうちが同額なの?」は、根拠が見えない会計への不満です。比率という見えるルールがあれば、不満は「うちは幼児だから0でいいよね?」「中学生は0.5でいい?」という事前の相談に変わります。夫婦それぞれが育った家の「暗黙の普通」を、二人の家族の「明文ルール」に置き換える——親戚の会計を整えることは、実は夫婦のすり合わせの練習でもあるのです。
結論は二つ、どちらも正解です。なぁなぁで回っているなら、どうぞそのままで——それはアプリより上等な、仲の良さという解決策です。もし帰りの車の中が毎年少し気まずいなら、今年のお盆だけ、世帯比率のゆるい精算を試してみてください。親族の集まりでの世帯割りの具体的な進め方は「親族の集まりの割り勘」でも解説しています。
