付き合い始めに「フェアでいたいから」と決めた完全折半。しばらく続けていると、片方だけが「なんだか苦しい」と感じ始めることがあります。
同じ額を払っているのに、どうして不公平に感じるのか。じつは計算してみると、理由はかなりはっきりします。
この記事の要点
- 夫婦と同棲は前提が違う。夫婦には「収入に応じて分ける」という決まりが法律にあるけれど、同棲にはない。自分たちで決めるしかない
- 折半だと、払う額は同じでも手元に残るお金が2倍以上違うことがある。モヤモヤの正体はこれ
- 原因は「収入の差」と「食べた量・飲んだ量の差」の2つ。直し方が別なので、分けて考える
夫婦なら法律が決めてくれる。同棲は自分たちで決める
夫婦なら、生活費は収入に応じて分けるのが基本です。感覚の話ではなく、民法にそう書いてあります(760条)。でも同棲だと、この決まりは使えません。法律から見ると、同棲中の二人は他人だからです。だから分け方は二人で決めるしかないし、決めないままだと、なんとなく折半で進んでいきます。
もうひとつ、結婚を考えているかどうかでも重みが変わります。いずれ一つの家計になるなら、今の多少の偏りはあとで自然にならされていきます。まだそこまでではないなら、出したお金はそれぞれのもののまま。分け方をはっきりさせておく意味が大きいのは、こちらのほうです。
モヤモヤの正体は「残るお金」
「同じ額を払っているのにフェアじゃない気がする」。この感覚、気のせいではありません。数字にしてみます。
手取り30万円と18万円の二人が、家賃を含めて月16万円を一緒に使っている場合です。
| 分け方 | 手取り30万の人 | 手取り18万の人 |
|---|---|---|
| 完全折半(各8万円) | 残り 22万円 | 残り 10万円 |
| 収入比(10万円/6万円) | 残り 20万円 | 残り 12万円 |
折半だと、手元に残るのは22万円と10万円。2.2倍の差です。収入比で分けると1.67倍まで縮みます。
払う額は同じなのに、自由に使えるお金は倍以上違う。これで不満が出ないほうが不思議です。しかも同棲の場合、この「残り」は二人のお金ではなく、それぞれの手元に残る個人のお金。だから差がそのまま効いてきます。
収入差は「収入比」で直せる
やり方はシンプルで、手取りの比でそのまま割ります。
手取り30万円と18万円なら、合計48万円に対して62.5%と37.5%。月の共同の支出16万円をこの比で分けます。
- 16万円 × 62.5% = 10万円
- 16万円 × 37.5% = 6万円
- 足すと 10 + 6 = 16万円。ぴったりです
端数が出たら千円単位に丸めてしまって大丈夫です。細かい正確さより、二人が同じ計算式を見ていることのほうがずっと大事。式さえ共有できていれば、収入が変わったときも同じ手順で決め直せます。
「食べた量が違う」は、別の話
収入差とは別に、「食べた量・飲んだ量が違う」という悩みもあります。片方はビールを何杯も飲んで大盛りを頼み、もう片方はウーロン茶と軽めの食事。これを同じ額で割るのはどうなんだろう、という疑問です。
この2つ、原因が違うので混ぜると解けなくなります。収入差は「払える額」の話で、食べた量は「使った額」の話だからです。
食べた量・飲んだ量の差は、比率で調整します。片方だけお酒を飲む食事なら、飲まない側を1.0、飲む側を1.4くらいが目安です。
- 食事代1万円 → 飲まない人 4,167円/飲む人 5,833円
- 足すとちょうど1万円
ここでひとつ、言い方の向きが大事です。「飲まない人を安くする」ではなく、「飲んだ人が飲んだ分を足す」。前者だと値引きの話になって、言われた側が気を遣います。後者は飲んだ分を飲んだ人が払っているだけなので、誰も引け目を感じません。
順番は2段階。まず食べた量で分けて、その合計を収入比で割る、です。
置き場所は、生活費だけの口座を新しく作るのがいちばんすっきりする
比率が決まったら、次は「どこに置くか」。まず思いつくのが共通口座だと思いますが、その前にひとつだけ。
「共通口座」と呼ばれているものは、じつはどちらか一方の名義の口座に、二人でお金を入れている状態です。カップル向けの口座を用意している銀行もありますが、名義人はやはり一人。二人の名義で一つの口座を持てる仕組みは、調べた限り日本の銀行には見当たりませんでした。
とはいえ、これは困ることではありません。名義が一人でも、生活費専用の口座を新しく一つ作れば、二人で使うぶんには十分です。ネット銀行ならスマホで開設できます。
「新しく作る」ところに意味がある
見落とされがちなのがここです。今使っている口座を二人で見るのと、新しく作った口座を二人で見るのとでは、まったく別の話になります。
今の口座を見せると、給与も、自分の買い物も、貯金の額も、まとめて見えてしまいます。隠したいものがあるわけじゃなくても、見せる必要のないものまで見える。だから開示にためらいが出て、そこで話が止まりがちです。
生活費用に新しく作った口座なら、入っているのは生活費だけ。見えて困るものが、最初から入っていません。だから残高も明細も気兼ねなく見せられます。口座を分けた時点で、開示のハードルはほとんど消えます。
相手に中身を見せるには
名義は一人なので、もう一方がどう中身を見るかは決めておく必要があります。
おすすめしないのは、ネットバンキングのIDとパスワードをそのまま渡す方法です。銀行によっては、IDやパスワードを他人が知り得る状態にしていた場合、不正利用されても補償の対象外になることがあります。
現実的なのは、名義人が家計簿アプリに自分の口座をつないで、その口座だけを相手と共有する方法です。夫婦・カップル向けのOsidOriは口座ごとに見せる範囲を選べるので、生活費の口座だけを二人で見る側に置いて、個人の口座は自分だけのままにできます。パスワードを渡さずに、見せたいところだけ見せられます。
口座をまとめない、という手もある
お金を一箇所に集めない形もあります。各自の財布はそのままにして、誰がいくら立て替えたかの記録だけを共有し、月末に差額を一回送る。それだけです。
どちらが良い悪いではなくて、違いはお金を先に動かすか、あとで動かすかです。
| 先に動かす(生活費口座) | あとで動かす(記録して精算) | |
|---|---|---|
| やること | 毎月決めた額を入れて、そこから払う | 各自が払って、記録を残す |
| 楽なところ | 都度の精算がいらない | 始めるのが軽い |
| 続ける手間 | 毎月の入金を習慣にする | 立て替えるたびに記録する |
どちらを選んでも、先に決まっていないといけないのは比率のほうです。置き場所だけ決めても、いくらずつ出すかが決まっていないと、結局同じ話に戻ってきます。
なお、生活費口座を作っても、日用品のようにレジで払う出費は口座を通りません。そこの回し方は同棲の日用品が片方に偏る問題の記事で書いています。
「家賃はこっち、食費はそっち」はおすすめしません
「家賃は収入が多いほうが払って、食費はもう一方が払う」という項目別の分担。一見すると計算がいらなくて楽そうですし、そう勧めている記事も多いです。ただ、この方法には困ったところが二つあります。
ひとつは、お互いが見えなくなること。家賃を払う側は食費がいくらかかっているか知らないし、食費を払う側は家賃の額をあまり意識しません。合計がいくらなのかも分からない。この状態で「自分ばかり負担してる気がする」と思ったとき、確かめる方法がないんです。数字で解消できない不満は、そのまま残ります。
もうひとつは、自分の担当じゃないところに無責任になること。食費を相手が持ってくれるなら、高いものを頼んでも自分の財布は痛みません。節約する理由がなくなります。逆の立場からは「なんでこんなに使うの」と見える。使う人と払う人が分かれている限り、ここは変わりません。
残る方法は二つ。共同の財布に比率で入れるか、各自が立て替えて記録し、月末に差額を精算するか。共通しているのは、支出の全体が二人に見えていることです。比率をどう決めるかより、まず見えていることのほうが先だと思います。
どう切り出すか
言い方には、ひとつだけ気をつけたいところがあります。「もっと多く払って」は要求に聞こえますが、「残る額を揃えたい」は事実の共有です。上の表をそのまま見せれば、話はこじれにくいです。
来月から生活費の分け方を少し変えない? 今の折半だと、二人とも8万円ずつ出して、手元に残るのが22万円と10万円で倍以上違うんだよね。収入の比で分けると10万円と6万円になって、残りが20万円と12万円になる。そのほうがお互い納得できる気がするんだけど、どう思う?
相手が立て替えた分と自分が立て替えた分を記録しておけば、月末の精算は一回の送金で済みます。どちらがいくら出したかを、あとから思い出す必要もなくなります。記憶に頼らないことが、お金の話をこじらせないいちばんの方法です。
比率は一度決めたら終わり、ではありません。収入が変われば、同じ式でもう一度出し直すだけ。式を共有しておくのが、お金の話を毎回ゼロから始めないための近道だと思います。
