同棲を始めるとき、家賃と光熱費の分け方はたいてい決めます。「家賃は収入が多いほうが少し多めに」「光熱費は半分ずつ」。ここまではだいたいうまくいきます。
決め忘れるのが、日用品と食材の買い足しです。シャンプーの詰め替え、ゴミ袋、調味料、切れた電球。1回ごとは数百円なのに、数ヶ月たつと片方だけが払い続けていた、ということがよく起きます。
問題は金額そのものより、その偏りがどちらにも見えていないことです。払っている側は「言うほどでもない」と黙り、払っていない側はそもそも気づかない。この記事は、日用品の出費を二人に見える状態にしておく仕組みと、すでに偏ってしまったあとの切り出し方をまとめたものです。
この記事の要点
- 揉めるのは家賃ではなく日用品。少額で回数が多く、買い出しに行く側に偏る。厄介なのは金額より、その偏りが相手に見えないこと
- 各自が二人のもの専用のカードを1枚持つと、明細がそのまま二人の支出一覧になる。週に1回まとめて記録し、二人で同じ画面を見る
- 精算は送金ではなく、負債が多いほうが次に払う。すでに偏っているなら、過去の請求ではなく「今日からの仕組み」として切り出す
家賃では揉めない。揉めるのは日用品
家賃や光熱費は金額が大きいので、最初にきちんと話します。しかも月1回、口座から落ちるだけ。分け方さえ決まっていれば、その後で揉めることはほとんどありません。
日用品はその逆です。
- 1回が数百円から数千円と少額で、「半分ちょうだい」と言い出すほどではない
- 週に何度も発生する。レジのたびに相手に確認するのは現実的でない
- 減っていることに気づく側、つまり買い出しに行く側が、そのまま払うことになる
数字にしてみます。食材の買い足しと日用品で、週2回・1回1,500円くらいとすると、月に約12,000円。半年で72,000円です。これを片方が払い続けていた場合、本来は半分の36,000円を相手が持つはずだったので、半年で36,000円ぶんの偏りになります。
金額そのものより厄介なのは、この偏りが片方にしか見えていないことです。払っている側は「ケチだと思われたくない」「せっかくの生活に水を差したくない」と黙る。もう一方は、減っていることにも買われていることにも気づいていないので、悪気なく何も払わない。言えないまま溜まった不満は、お金の話ではなく「なんで気づかないの」という相手への不満に変わっていきます。相手からすれば、知らなかった話でいきなり責められることになります。
口座を作っても、日用品は穴になる
「じゃあ生活費の口座を作って、そこから全部払えばいい」。これは正しくて、家賃や光熱費、ネット代のような引き落としには一番向いています。生活費専用の口座を新しく作る考え方は、収入差があるカップルの比率の決め方の記事で書きました。
ただ、日用品はこの口座を通らないことが多いんです。理由は単純で、レジでは手元にあるカードやスマホで払うから。仕事帰りにドラッグストアに寄ったとき、生活費口座のカードを持っているとは限りません。しかも口座のカードは基本的に名義人のものなので、もう一方が買い物をすれば、それは必ず立て替えになります。
口座は引き落としの受け皿。日用品には、別の受け皿が要ります。
二人のもの専用のカードを、各自1枚作る
日用品の受け皿は、口座ではなくカードです。クレジットでもデビットでも構わないので、「二人のために使う買い物だけに使うカード」を、それぞれが1枚持ちます。自分のものは、いつものカードや現金で。
これだけで、二つのことが片づきます。
- 誰が買っても記録に残る。口座のカードのように「名義人しか持てない」問題がない
- 明細がそのまま二人の支出の一覧になる。私物と混ざっていないので、あとで「これはどっちの買い物だっけ」と迷わない
どちらのカードで払うかは、3行で足ります。
- 二人で使う消耗品(食材、調味料、洗剤、トイレットペーパー)は専用カード
- 一人しか使わないもの(生理用品、髭剃り、化粧品)は自分のカード。金額に関係なく
- 家電や家具は、買う前に「これは二人のもの?」と一言聞いてから、どちらかのカード。買ったあとに変えない
実際の買い物では、シャンプーの詰め替えと自分の化粧水が同じかごに入ることがよくあります。レジで2回に分けて払うのは面倒なので、迷ったら自分のカードで払ってください。逆はすすめません。専用カードの明細に私物が混ざると、相手が見たときに「これ何だっけ」が生まれるからです。専用カードの明細は、いつ見られても全部二人のもの。この状態を保つことが、このカードの一番の価値です。自分のカードで払った中の二人のもの分は、あとで立て替えとして記録します。
二人のカードの締め日がそろっていると、明細を見比べるときに楽です。ただ必須ではありません。記録を週に1回にするなら、締め日はほとんど関係なくなります。
記録は週に1回。二人で同じ画面を見る
「立て替えたらその場で記録」は、正直に言うと続きません。最初の1ヶ月はできても、3ヶ月目には抜けが出て、月末の数字が合わなくなり、そこで嫌になります。記録が続かないことが、この問題の一番の敵です。
専用カードがあれば、週に1回で足ります。やることは決まっています。
- 曜日を決める。たとえば日曜の夜
- それぞれが専用カードの明細を開き、載っている分を「誰が・いくら」でアプリに入れる。専用カードなので、載っているものは全部二人の支出。判断がいらないから、5分で終わる
- 自分のカードで払った買い物に二人のものが混ざっていたら、その分だけレシートを見て立て替えとして足す。レシートを取っておくのはこの場合だけ
大事なのは、記録を二人で同じ画面で見ることです。それぞれが自分の家計簿につけて月末に突き合わせる形にすると、突き合わせの日に「この分は入ってない」が出て、そこで嫌になります。一つの記録に二人が入れて、同じ一覧を見る。相手が入れた分もその場で見えるので、「私ばかり買っている」がそもそも溜まりません。数字が先に見えていれば、不満になる前に「今週はこっちが多いね」で終わります。
入れる先は、家計簿アプリでも割り勘アプリでも構いません。二人で同じ記録を見られること、収入差があるなら比率を設定できること。この二つがあれば十分です。二つの違いは機能ではなく、何を目指しているかの違いで、家計簿アプリと割り勘アプリの違いにまとめました。
月末に送金しない。「負債が多いほう」が次に払う
記録がたまると、アプリが「今、どちらがどちらにいくら」を出してくれます。ここで月末に送金してもいいのですが、もっと楽な回し方があります。
一緒に買い物や外食をするとき、負債が多いほうが払う。それだけです。払えば差額が縮む。次も負債側が払う。送金の手間がゼロのまま、差はいつも小さいところに落ち着きます。
折半なら「最近こっちが多く出してるな」で暗算できますが、収入比で分けていると、今どちらが負債側かは計算しないと分かりません。だからここだけはアプリの表示を見る。月末の精算作業がなくなる代わりに、支払いの前に一度画面を開く、という形になります。
差が大きく開いたとき、たとえば旅行や家電のあとは、そこだけ送金で戻せば十分です。
もう一つ、月末の精算をやめると、履歴に区切りがなくなって積み上がっていきます。四半期か年に1回は区切りをつけて、その時点の差額を送金で精算し、そこから新しく記録を始める。こうしておくと「あの3ヶ月はどうだったか」をあとから見返せます。毎月やるほどではないけれど、まったくやらないと見返す単位がなくなる、という話です。
すでに偏っているなら、こう切り出す
ここまでは初日に決める話でした。ただ、この記事を読んでいる人の多くは、もう数ヶ月たっていて、買っているのがいつも自分だと気づいた人だと思います。
その場合、いちばん揉めるのは「半年で36,000円、あなたの分」と過去の数字を出すことです。相手には見えていなかった話なので、正しくても責められた形になります。おすすめは、過去の精算ではなく、今日からの仕組みの話として切り出すことです。
「日用品、どっちがどれだけ買ってるか分からなくなってるから、二人のもの専用のカードをそれぞれ持って、記録していかない?」
これなら相手を責めていません。「分からなくなっている」のは事実で、それを直す提案です。相手が「たしかに自分は買ってなかった」と気づけば、そこから先は仕組みが回ります。
過去の分をどうするかは、仕組みを提案したその日に一度だけ聞きます。戻すなら送金で一回きり、戻さないなら記録の開始をゼロにする。どちらでも構いません。決めておくのは、あとから蒸し返さないことだけです。記録が始まれば「今どちらが多く払っているか」は二人に見えるので、過去の分を引きずる必要がなくなります。
切り出すときに一つだけ気をつけたいのは、言われる側の気持ちです。相手は気づかなかったけれど、こちらも言わなかった。どちらか一方だけが悪い話ではありません。「気づいてよ」の気持ちのまま切り出すと、相手は責められたと感じて喧嘩になります。それでも、言わなければ相手には伝わりません。黙って溜めるのがいちばんよくない。だから、責める形ではなく、仕組みの提案として言う。言い方を選ぶのは、言わないためではなく、言うためです。
初日に決めておく4つのこと
ルールは細かくしないほうが続きます。決めるのはこの4つだけで十分です。
| 決めること | 具体的には |
|---|---|
| ① カード | 二人のもの専用のカードを各自1枚。私物が混ざりそうなら自分のカードで払う |
| ② 払い分け | 二人で使う消耗品は専用カード。一人しか使わないものは自分のカード。家電は買う前に一言 |
| ③ 記録の日 | 週に1回、曜日を決めて明細をアプリに入れる。二人で同じ画面を見る |
| ④ 払う人 | 一緒に払う場面では、負債が多いほうが払う。大きく開いたら送金で戻し、四半期か年に1回は区切って精算する |
もし片方が「そこまでしなくても」と言ったら、上の72,000円の計算を見せてみてください。半年後に言い出すより、初日に決めるほうがずっと軽い話です。
貯金まで見せ合うなら、共有家計簿アプリの段階
ここまでは「日用品の偏りをなくす」ための話です。その先に、二人で貯金を始める段階があります。それぞれが新しく口座を作って、そこに貯めていき、お互いの進み具合を見せ合う。
この段階に入ると、必要なのは立て替えの記録ではなく、口座の残高が見えることです。それは資産を扱う共有家計簿アプリの領域で、割り勘アプリの守備範囲ではありません。逆に言えば、日用品の偏りを直す段階では、そこまでの仕組みはまだ要りません。
日用品を買っているのがいつも自分だと気づいたとき、それを言い出すのは気が重いものです。だから、気づく前に仕組みで決めておく。もう気づいてしまったなら、責める話ではなく、見える仕組みの話として切り出す。お金のルールは、揉めてから作るより、揉める前に作るほうが、ずっと穏やかに決まります。
